2016年5月11日水曜日

トヨタ86がMC・・・うーん進化のペースが。

  他のブログ記事でも書いたのですが、5年後のGTカー市場はいったいどうなっているんだろうか?・・・例えば多くのファンの懐疑の想いの中でフェラーリやポルシェでも相次いでターボ化が断行されるなど、趣味性が高いクルマに対しても相応の環境性能を高める要求が強まりつつあることで、今よりももっともっとクルマはつまらなくなるんじゃないか・・・そんな悲観的な意見の人もいると思います。

  もしくは、フォード撤退によってせっかく右ハンドルが出来たマスタングも新たに発売されるフォードGTも日本には正規ルートでは入って来ない見通しです。ホンダも日本ではNSXを売るつもりがあるのでしょうか?トヨタもレクサスLCを日本でもフルスペックで展開するでしょうか?(HVのみとか・・・) つまり日本市場だけが世界のGTカーシーンから放置されるようになり、中国人が楽しむのをじっと動画で見ているだけになるのかも・・・。上海、北京はもちろんバンコクやジャカルタのMSにはやってくるのに、東京MSには来ないというブランドも多くなりましたね。フェラーリ、ランボルギーニ、キャデラック、リンカーン・・・etc

  それとは別の問題、いや多少は関係あるかもしれないですけど、2007年頃からGTカーのスペックが飛躍的に高まってからというもの、それに合わせて次第に価格も高騰したこともあって、最新のGTカーを楽しむ環境は一般的な日本人ユーザーにとってはだいぶ窮屈なものになりました。いまも2002年に一斉に絶版したスープラやシルビアの人気が高くてかなりの稼働率を見せてます。これらのクルマはもう15年前後を経過しており、いくらレストアの技術が進歩したとはいえ、「クルマを楽しむ」使い方をしていれば、いろいろと維持が難しい局面に突入していると思います。だけど乗り換えるクルマがねーんだな・・・。

  2012年にトヨタとスバルの共同開発によって、これらのGTカーやスポーツカー需要を取り込めるような新型スポーツカー「86/BRZ」が発売されました。せっかく出てきて専用設計スポーツカーですから、日本のクルマ好きが温かい姿勢で育んでいかなきゃいけない・・・そんなことは百も承知なんですけども、GTカーだったら必ず要求される「クルマの魅力」についてはいまいちピンとこないという意見も少なくないです。「限られた予算で楽しめるクルマ」という合理的なコンセプトを忠実に達成するとこに関しては優秀すぎるトヨタの仕事ぶりには納得ですが、その計算高さゆえにやや魅力が限定的なのかな〜・・・という気も。

  このクルマのどんな点が気になるのか? これは86/BRZの根幹的な部分ではあるのですが、スバルのボクサーエンジンを採用するという大前提からして、とっても「営業的な視点」を感じてしまいますね・・・あまりに厳しい意見かもしれないですが、すでにボクサーエンジン搭載の段階でこのクルマの終着点がほぼ決めてしまっていると思うのです。なんで汎用性や耐久性に優れるトヨタのエンジン(直4かV6)ではダメだったのか? まず開発者の念頭にあったのは、ボクサーエンジンの希少さで商品価値を上げようという判断だと思います。できるだけ売りやすくすること・・・スポーツカーを作ることによるリスクをヘッジする「コンサル」的な判断だとは思いますけどね。

  例えば世界的にも評価が高い、英国のスポーツカーメーカーの「ロータス」や「ケータハム」では、それぞれの最上級のモデルに日本メーカーが設計したレシプロエンジンを使っています。「ロータス・エキシージS」にはトヨタの3.5Lスーパーチャージャーを、「ケータハムR620」にはマツダMZRエンジンをベースにした2Lスーパーチャージャーが使われています。トヨタはエキシージだけでなくエリーゼにも1.8Lエンジンを供給しています。

  トヨタは従来からスポーティなエンジンは提携しているヤマハにチューンさせているので、スバルに頼むかヤマハに頼むかの2択だったとは思いますけども、「ポルシェと同じボクサー」という目先のことを追い求めた結果、クルマの拡張性に重大な疑義が出ていると言われています。低重心なエンジンを使うことで、限界領域でのコントロール性を向上させろ!という指示はトヨタの社長から出されているのかも知れませんが・・・。

  完成したトヨタ86の設計から読み取れる設計の意図は、スポーツカーとして「汎用性」よりも「専門性」に重きを置いているようです。ボデーはクラシカルなクーペスタイルで、それこそフェラーリ・デイトナやジャガー・Eタイプの頃から受け継がれてきたFRのGTカー的なスタイルを踏襲しています。それなのに走りは全くロードゴーイングではなく、競技用車両を目指しています。

  GTカー、つまり高性能プライベートカーとしての需要に長いスパンで応えていくためには、なによりクルマの拡張性が大事です。場合によっては直4、V6(直6)、V8とブランド縦断的にエンジンが搭載できるような柔軟な設計であるべきだったと思います。それがデビューの段階でフラット4の自然吸気というガチガチの設計で固めてしまった結果、車高の低さゆえにターボチャージャーの有効性が保証できないとして、ターボ化が棚上げされたままになってしまいました(走りの楽しさについてはターボ化すれば良いというものでもないですけど)。

  スポーツカーという話題性で売るクルマに、大胆な刷新ができないのは少々つらいですね。ポルシェはノーマルと「S」、「GTS」、「GT3」、「R」とクルマが持つ拡張性を上手く使ってモデルサイクルを生き抜いています。今回の86のMCは公称値で5psのスープアップを実現したそうですが、これでいったいどれくらいの人が動くのか?馬5頭分のパワーアップってなかなかスゴそうだけど、じっさいは素人に関知できるレベルではないですね。ミッションの特性だけでもあやふやになってしまうレベルです。

  2012年の発売時に86/BRZはユーザーが「弄る」ためのクルマだと開発陣は声を揃えて宣言していました。トヨタが音頭を取ったことで国内外の多くのチューナーからエアロなどのパーツが登場しました。ユーザーが好きなハネを付けて、好きな音にしたらいい!とまで言い切っているわけですから、欧州のGTカーの王道を歩む必然性もないのですが・・・。さてトヨタですがこの86と併売をする前提で、欧州GTカー文化ど真ん中のスープラ後継モデルをBMWに作らせていると報じられてます。BMWが手掛けるわけですから86のような「250万円〜」といった価格設定にはならないでしょうけども・・・86に不満なGTカー好きはそれを待て!ってことのようですね。


リンク
最新投稿まとめブログ

0 件のコメント:

コメントを投稿