2017年4月14日金曜日

スバル・WRX-S4 「いっそ名前を変えた方がいい」

  1966年に富士重工が発売した初の水平対向4気筒車は「スバル1000スーパーデラックス」と言います。スバルがRRからFFに転換した際に投入することになったことからボクサーエンジンが採用されたようですが、この50年の歴史を誇るスバルの運動性能重視のパッケージングは、この後1969年に「FF-1」へ受け継がれ、「FF-1・1300G」「レオーネ・セダン」と大きくコンセプトを変えることなく進化を続け、そのストイックな理念は、そのまま1992年発売の初代インプレッサに設定された「インプレッサWRX」へと繋がります。

  さらに3代目WRX(先代)がデビューした2007年には、欧州市場を意識するあまりにスバルがWRXモデルからセダンを一時的に廃止したところ、スバル1000の伝統を無視するな!!とばかりに、相当な数のスバリストによる凶悪な抗議(?)が殺到して売れ行きも最悪だった(GT-R&エボ10デビューと同じ年というのもあったかな?)ので、慌ててセダンを追加した・・・という顛末があったらしいです。その際にWRXに新たに設定されたのがGT-Rやエボ10にすでに装備されていた2ペダルモデルですが、これも頑固なスバリストから総スカンを喰らったようです。

 

  おそらく現行モデルで、スバル1000の精神の正当な継承車になっているのが「WRX・S4」あるいは「WRX・STI」なのですが、50年にも及ぶその歩みを考慮すれば、もっと世間に「重み」を感じさせる存在でも良さそうなんですけどね・・・。特に2ペダルのモデルに新たに名付けられた「WRX・S4」というあまりにもアイディア不足で平凡なネーミングのせいで、これまた大きく「損」をしています。先代のCVTを使ったWRXはあまりにも市民権を得ていなかったので、いっそWRXから切り離して、「スバル1000」あるいは「FF-1」という名称を復活させるくらいの「サプライズ」で話題を集めた方が良かったんじゃないかなー?(勝手な予測ですが)もっともっと売れたと思います。

  誤解を恐れずにズバリ言うならば、スバルの企画部がイメージしている「ハイスペックカー」のカテゴリー分けは、どうも世間のクルマ好きが思っているものとは大きく隔たりがあります。スバルWRXは、BMW・Mや日産が得意な「改造自動車」ではありますが、それらよりもはるかにスポーツカー寄りの立ち位置にあります。ラリー競技のベース車両として世界に広く認知されている故に、改造自動車の限界を超え、存在そのものがスポーツカーになっています。そんなWRXを2ペダル仕様でラグジュアリーに仕立てることで、無理やりに「GTセダン」として売ろう!!という目論見自体は悪くないですけども、誰でもすぐにWRCを連想する「WRX」の名称のまま売る意味がさっぱりわからないです。

  開発者に対して大変失礼ですし、結果論でしかないかもしれないですが、このクルマを試したときに、「サイズ、価格、パフォーマンス」だけのクルマだなーって感想でした・・・大して売れないだろーな。とりあえず「S#モード」でベタ踏みすれば、なかなかエマージェンシーなエンジン音が響いて、こんなギミック一つでも十分に「スポーツセダン」だなと納得しますけど、それよりも気になったのが、運転支援の要素が出過ぎてて、子供が補助輪を取った自転車を大人に支えられながらペダル漕いでいるような「過保護」なイメージが強すぎりことです。4800mmクラスになったレガシィB4にこのような手厚い運転支援なら納得できますけど、4500mmのミニサイズにここまでされると「高齢者向け」という思惑が透けて見えます。(実際にそうなんでしょうけど)

  いくらターゲットが引退世代だからと行っても、長年いろいろなクルマに乗ってきた相当に「クルマが好きな人」がユーザー予備軍でしょうから、若輩ものの私が感じたのと同じかそれ以上に「過保護だなー」って感じるんじゃ無いですか? それを想像するだけでも「ユーザー本位で企画する視点が大きく欠如した」と断罪したくなります。350万円のクルマでこれは無策すぎる!! それに輪をかけるように愛情不足な仕事ぶりを感じる点がいくつもあります。

  ハンドリングはAWDですからある程度は仕方ないですけどだいぶ「退屈」です・・・これはSUVか!? そしてダンパーを使い分けて「グレード分け」をしていますから、試す時にはいつも以上に乗り味に神経が行きますけど、どっちもあまり感心しない出来栄えで、これが相当に印象を悪くしてくれます。古いプラットフォームだからポテンシャルもこんなものなのかなー・・・。レヴォーグもそうだけど、基本的な部分をアメリカで開発した弊害なんじゃないですかね。繊細な味の日本車に乗り慣れていると余計に落差を感じます。

  もちろんスバルにとってもそんなことは百も承知なようで、販売ボリュームが大きいレヴォーグに関しては、足回りを徹底的にやり直した「レヴォーグSTI」を、ちゃっかりとラインナップしてたりします。「落ち着いて乗る人のためのSTI」などと、なんとも白々しいこと言ってますねー。しっかり修正ができるんなら最初からやればいいのに!!レクサスや日産の栃木モデルは最初からきっちり仕上げてくるのに、スバルやマツダの新型登場時は、ほぼ例外なく足回りの仕上げにブレが生じてます。現行のフォレスターとアクセラの初期モデルはほぼ「事故」でした。後期モデルになって相当に改善されてますから、どちらも今が買い時。

  団塊世代の大量引退にターゲットを絞ったクルマ。WRX・STIよりも肩の力を抜いて楽しく乗れて十分にスポーティなスペックの「スポーツセダン」。おそらく目指すところは日産GT-RやBMW・M3のリーズナブルな「互換モデル」なのでしょうけど、スバルの看板モデルとは思えないくらいに、車の出来がどうもフワフワしていて、乗っても特に「何も感じない」し、このクルマに乗っても「人生のステージ」が上がるという予感もない・・・いわゆる「痛い」クルマになってしまいました(開発者の皆様ごめんなさい)。「WRX」のネームバリューで訴求すれば、GT-RやM3と同じステージに立てると単純に考えたのでしょうか? それを挽回するかのように、昨年に期間限定受注で登場したのが「S4・tS」というモデルです。


  レヴォーグSTIでは、足回りの不甲斐なさを修正してきましたけど、このS4・tSはスタイルとパフォーマンスをもっと刺激的に(スポーティに)したコンプリートモデルでした。業績好調で、限られた生産枠で作っている事情もあるのでしょうが、レヴォーグSTIとは別のタイプのユーザーを満足させるべく、逆方向に持っていきました。「ターボ・スポーツ車」の魅力を引き出すパッケージで、BRZともしっかりと距離を置いてます。これならGT-RやM3の「互換」にもなれそうです。一瞬で売り切れたS207もそうですが、リセールを考えるとかなりお得でしょうし、スバルを買うならSTIのコンプリートモデルにしとけ!!ってことなんですかねー。

  さてノーマルのボンクラな「WRX-S4」をいっそ「FF-1」に改名したらどうですか?スバル1000の正当な後継モデルとして、競技車両の色合いを薄めたモデルを、欧州の伝統あるブランドのように作り続けるのがいいと思うんですけどねー。余計な御世話ですけども。(今後のスバルには注目してます!!)




  

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